本日は、必要経費の業務関連性についてお話したいと思います。
弁護士会の役員としての活動に伴い支出した懇親会費等を事業所得の金額の計算上
必要経費に算入し、また消費税等の額の計算上課税仕入れに該当するとしたことが、
税務調査で否認されたことによる税務訴訟の高裁判決が出ました。
納税者逆転勝訴で、その判決理由において「必要経費の業務関連性」が明示されました。
すべての事業所得に関わりのある、意義ある判決と言えます。
必要経費の該当性についての税務署の見解は、「当該事業の業務と直接関係を持ち、
かつ、業務の遂行上専ら必要」なものということでした。
国税不服審判所の裁決では、「弁護士業務に直接の関連を有し、業務遂行上通常必要な支出」
に限るとし、「専ら→通常」に変えました。
地裁判決は、「事業と直接関係し、かつ当該業務の遂行上必要」であることを要すとし、
「通常必要→必要」にゆるめました。
高裁判決は、「事業所得を生ずべき業務の遂行上必要」なものであればよいとし、
「直接関係→不要」としました。
所得税法では、必要経費に算入すべき金額として下記のものを挙げています。
①総収入金額に係る売上原価
②当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額
③その年における販売費・一般管理費
④所得を生ずべき業務について生じた費用
ちなみに、売り上げとのひもつき関係が要求されているのは、①の「売上原価」と
②の「直接に要した費用」のみです。
③の販管費と④の業務関連費については、売上とのひも付き関係は要求されていません。
高裁判決によると、条文の上での④の「所得を生ずべき業務」とは、
収入を獲得することに直接結び付くものである必要はなく、
社会通念に照らして相当であればよいという理解です。
税理士会や弁護士会の存在を無視するような勇み足の税務更正処分だったことは、
当初から言われていたことで、妥当な落とし所で決着したという印象です。