本日は、パテントボックス税制についてお話したいと思います。
経団連は、平成25年度税制改正提言で「パテントボックス税制の創設」を採り上げています。
日経新聞もこの提案を後押しする記事を時々書いています。
米IT企業は税務戦略が巧みで、TAX HAVENに利益を移して税逃れをしていますが、
日本のTAX HAVEN対策税制は堅固なので、同じ仕組みでは税逃れ困難です。
パテントボックス税制は、最近EU諸国に普及し出した税制で、現在7ヶ国で導入済みです。
二元的所得税のような分類所得課税の法人税への応用版です。
特許権等の知的財産権(パテント)に係る収益に対する課税を低税率とするものです。
フランス 2001年導入 15%
ハンガリー 2003年導入 9.5%
オランダ 2007年導入 5.0%
スペイン 2008年導入 15%
イギリス 2013年導入 10%
EUのパテントボックス税制導入国は、TAX HAVEN国に該当しないので、
日本のTAX HAVEN対策税制は適用されません。
パテントボックス国の海外子会社に特許権等の知的財産権を移転し、
パテント料の支払いを通じてそこに利益が集積するようにすると、
連結グループの利益の相当部分が低税率課税で済むことになります。
特許権等の知的財産権の管理業務を海外に移すだけだったら、研究開発拠点あるいは
企業の超過収益力の源泉である無形資産の開発力が海外移転してしまう危険はなさそうです。
経団連の提案の趣旨は、パテントボックス税制による企業の税負担の縮減の恩恵は受けたいが、
せめて縮減された税金は日本国に納入したいと言うことなのでしょう。
パテントボックス税制は、生気を失った古い先進資本主義国が、自らを部分的TAX HAVEN国化
することによって、外国企業の課税逃れ戦略による節税額の一部のおこぼれに与かろう
という趣旨のダーティー国策と言えます。
しかし、その悪弊は、お互いの国同士が課税の侵蝕をしあって、
各国の財務体質を損なう方向に向かうものです。
しかし、賽は投げられており、既に止めようのない世界の潮流になりそうです。