本日は、複数税率だった消費税についてお話したいと思います。
財務省のホームページに、以下の記載があります。
「単一税率の下では、請求書等に税額が別記されていなくても仕入税額の計算に支障はないが、
複数税率の場合、請求書等に適用税率・税額の記載を義務付けたもの(インボイス)がなければ
適正な仕入税額の計算は困難」
各界からの税制改正要望をみても、単一税率・帳簿方式の維持という文言があふれています。
識者の文章にも「日本は一貫して単一税率を維持してきた」という言い回しを見受けます。
消費税法をいくら探しても、平成9年3月までは3%、
それ以後は5%という税率しか出てきません。
しかし、消費税立法時の消費税法附則をみると6%税率があり、
平成4年の改正措置法には4.5%の税率があります。
日本の消費税は、当初は複数税率で出発したのです。
なお、帳簿方式であることには変更はありませんでした。
複数税率でも、帳簿方式で不都合はなかったのです。
平成4年版の財務省刊行の税制改正の解説書には、次のように書かれています。
■消費税導入時の経過措置として
・平成元年4月1日から平成4年3月31日までの間における普通乗用自動車の譲渡に係る
消費税の税率は100分の6
・平成4年4月1日から平成6年3月31日までの間における普通乗用自動車の譲渡に係る
消費税の税率は、本則税率である100分の3ではなく、100分の4.5
■割賦販売等の場合
・平成4年4月1日からは、事業者によっては、普通乗用自動車に係る税率が、
100分の4.5と100分の6の二種類になり得ることに留意が必要
したがって、日本の消費税は単一税率だったというのは事実ではありません。
単一だったとしても、平成6年11月改正・平成9年4月施行の消費税法で5%になった時、
経過的には複数税率になっていますので、単一化での複数税率もあるのです。
これと異なり、帳簿方式については議論されたことがありません。
「複数税率の場合、・・・(インボイス)がなければ適正な仕入税額の計算は困難」
との言い分は、厳密には事実に反しています