動産・債権担保

本日は、動産・債権担保についてお話したいと思います。

民法では、動産を債権の担保とする場合には、不動産と異なり抵当権を設定できず、
質権の設定に限られていました。

質権を設定する場合には、担保物の占有を質権者に移す必要があるため、
占有を移さない手法である「譲渡担保」と呼ばれる手法が学説・判例に支えられて発達してきました。

この「譲渡担保」は、債権者が債務者の担保物を一旦法律上譲渡という形で譲り受け、
債務の完済をもって、その担保物を返還するという形式を取ります。

買戻条件付譲渡や再販売の予約についても同様に担保の効果があるため、
変則担保などとも呼ばれています。

「譲渡担保」は動産だけでなく、不動産についても利用することができます。

所得税・法人税の通達では、実質主義の見地から、「譲渡担保」があった場合に
次の事項が契約書で明らかにしている時は、譲渡はなかったものとして取り扱われます。

①担保に係る資産(固定資産等)を債務者が従来どおり使用収益すること

②通常の利子(ないしは利子相当の使用料)の支払に関する定めがあること

ただし、所得税と法人税の通達では、要件として異なるものが求められています。

まず、所得税の通達では資産の限定はありませんが、債権者と債務者の連署による
「譲渡担保申立書」を提出することが求められています。

一方、法人税の通達では担保とする資産を固定資産に限定しており、
債務者側に自己の固定資産として経理することを要請しています。

逐条解説などでは、この固定資産に限って適用があることが強調されています。

有価証券は、証券の種類により担保権者と設定者に複雑な権利関係が生じるため、
この取扱いから除外するという記述もあります。

現在では、「動産登記制度」(H17)により動産の譲渡を公示することで、
企業が有する在庫商品・機械設備・家畜・売掛金等さまざまな動産を担保として活用する
ABL(Asset Based Lending:動産・債権担保融資)の促進が図られています。

「流動資産担保融資保証制度」(H19)も設けられている現状を考えると、
法人税の通達の文言はどうにかしてもらいたいです。