役員給与の二重基準による判定

本日は、役員給与の二重基準による判定についてお話したいと思います。

法人税法では利益調整を排除する観点から、役員給与のうち、
原則、定期同額の給与以外は損金算入が認められていません。

しかし、非上場会社等にあっては臨時的な給与であっても、
「所定の時期に確定額を支給する旨の定め」を税務署に届け出ることによって、
その届出に従った支給額は損金算入ができます。

この役員給与が事前確定届出給与です。

<具体例>

・9月決算法人

・○年12月に300万円・×年6月に300万円を支給する旨の届出を提出

上記の場合で、×年6月に「業績悪化等の理由」以外で100万円のみ支給となった場合、
損金不算入となる金額はどう判定されるかです。

この争点につき同種の裁判ですが、届出と異なる6月分の支給のみならず、
所定通り支給した12月の300万円までもが、損金にならないと判示しています。

理由は、役員の職務執行期間は株主総会の翌日から翌年の株主総会までであること。

よって、その職務執行期間の全期間を一個の単位として判定すべきであり、当該期間において
支給されたすべてが、定め通りに支給されていなければならないとするものです。

上記事案のケースを3月決算法人で解説している国税庁の質疑事例集では、
6月は翌事業年度のものであり、当該支給額のみが損金不算入である。

よって、12月の支給額は定め通り支給しているので、損金算入となるというものです。

このような国税庁の解釈では、同じ職務執行期間であっても事業年度が異なることによって、
課税上不合理な取り扱を受けることになります。

また、裁判所がいう役員の職務執行期間を一個の単位として判定するのであれば、
事業年度が異なろうが本来同じ取扱いをしなければ、公平な課税関係を導くことができません。

法律では、「その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて
支給する給与」と規定しているにすぎず、また、「職務執行期間」という規定はありません。

したがって、届出通り支給したものまで損金不算入することの合理的理由は見当たりません。

さらに役員給与でも「定期同額は事業年度単位で判定」「事前確定届出給与は
職務執行期間単位で判定」というのでは、整合性に欠ける取扱いと思料します。