本日は、コンピテンシー評価についてお話したいと思います。
2000年頃から、日本企業で成果主義・能力主義の評価を重視する傾向が強まったのに伴い、
「コンピテンシー評価」という評価手法が取り入れられるようになりました。
その目的は、職種別に高い業績を上げている従業員の行動特性を分析し、それをモデル化して
評価基準にすることで、従業員全体の質の向上を図ることにあります。
従来の日本型人材評価は、「知識・技術・協調性・積極性・規律性・責任性」など、
個別の顕在能力を中心に評価し、業績との関係を推量していました。
それに対し、コンピテンシー評価では「職種別に、業績に結びついた親密性・専門能力の発揮
・計数処理能力・論理的思考などの具体的行動特性」を見て評価するので、
会社業績への貢献度が的確に評価されるのが特徴とされています。
この評価基準を用いると、発揮能力評価と成果・業績との関係が明確になる
とされている一方で、次のような問題点も指摘されています。
①実際の被考課者は、その職種における高い業績を上げた行動特性と比較・評価されるため、
乖離(かいり)度が大きく、どうしても低めの評価になってしまう。
②評価者の被評価者に対する「好き・嫌い」など、恣意的な評価が入り込みやすい。
③評価の結果として、被評価者に対する納得性が低くなり、モチベーションを下げたり、
優秀な人材の流出につながることもある。
「コンピテンシー評価」の利点を生かして、問題点の発生を抑制するには、
経営者・人事責任者が次の点に留意して評価制度の設計・運用にあたるべきです。
1.コンピテンシーは一定・不変ではなく、個別業務とその従事者によって絶えず変化するので、
評価の視点としては使えるが、絶対的な評価尺度としては限界がある。
2.前項を踏まえ、「職種別に業績に結びついた複数の行動特性(コンピテンシー)」を
評価の視点とし、評価者(管理者)に 事実に基づく公正・納得性の高い評価を求め、
そのための訓練を行なう。