本日は、組織再編と借用・固有概念についてお話したいと思います。
法人税法の第2条は定義規定です。
ここで規定されている言葉の意味が、法人税法で使われるときの固有の意味になります。
例えば、『現物分配』という言葉には、それに続く( )書きがあります。
そのなかに「法人がその株主等に対し当該法人の次に掲げる事由により
金銭以外の資産の交付をすることをいう」となっています。
もちろん、規定されるまでもなく、誰もがその言葉を理解しているものについては
いちいち定義規定は置かれません。
ところが、合併とか分割・現物出資・株式交換・株式移転などには定義規定がありません。
誰もが理解している言葉ではないのに、何の規定もされないまま、法人税法で使われています。
理由は、他の法律に言葉の定義規定が置かれているからです。
他の法律で言葉の規定がされていると、新たに規定を置かないで法律の文章を作成するのです。
これを、法律の世界の基礎知識として、借用概念・固有概念といいます。
先の例の『現物分配』は、法人税法の固有概念です。
合併・分割・現物出資・株式交換・株式移転などは、会社法の規定を前提としているので
会社法からの借用概念です。
組織再編規定での適格・非適格についても、法人税法の第2条に定義規定が置かれています。
適格現物分配のところには、内国法人同士であることが要件とされており、
外国法人が当事者になると非適格となるようになっています。
しかし、合併とか分割・株式交換・株式移転・現物出資などの適格規定のところには、
外国法人排除の規定がありません。
再編当事者として外国法人が入ってきてもよいのか、疑問になるところです。
でも、疑問はすぐ解けます。
合併・分割・株式交換・株式移転は、日本の法律である会社法によって設立された法人間の
組織再編行為とされているということです。
外国法人は、原理的に組織再編の当事者になり得ないものとして当初から立法されており、
法人税法で規定するまでもないということでしょう。
なお、現物出資は会社法では単なる出資行為なので、税法で国内不動産や国内事業用資産を
除いて税制適格現物出資としていますが、外国法人を排除していません。