メールと税務調査

本日は、メールと税務調査についてお話したいと思います。

税務調査において、コンピューター内の各種データや電子メールを見せるように
求められるケースが多くなっているようです。

どの会社でもメールにはかなりの情報が詰まっており、メール調査を足がかりとして
申告書面では伺い知れない会社の本音を垣間見ることができ、
多くの場合で否認の端緒や根拠を見つけることになっているようです。

税務署員の質問検査権として、事業に関する帳簿書類その他の物件の検査・提示・提出を
求める権限があります。

電子メールは、ここでいう「書類」ではありません。

上記の「帳簿書類その他」の文言を拡大解釈して、対象に含めようとすることは、
法律の正当な解釈とはいえません。

電子帳簿保存法を根拠として帳簿書類を作成しない場合には、コンピューターの画面にて
電磁的記録の状態の「帳簿書類」を調査担当者が確認し得る状態にして開示する
必要がありますが、それだけで十分です。

電子帳簿保存法の適用を受けていて、電子メールで受注・発注・業務指示・業務報告を
常態としている場合であっても、電子メール内のすべての情報の画面開示を
要求することはできません。

明治憲法でも保護されていましたが、現憲法では一段と明確に
「通信の秘密」が保護されています。

国民の通信に対する公権力の監視・干渉からの自由は、基本的人権の1つです。

この憲法の規定を承けて、刑法・郵便法・信書便法に信書開封・信書隠匿に対して、
「秘密を侵す罪」として懲役刑と罰金刑が規定されています。

この自由権は、プライバシーの保護のためのものです。

会社にしても個々の従業員にしても、プライバシーもあれば
秘密にしたいこともあるのが普通です。

通信の秘密の対象には、文書としての信書の他、
電話・電子メールなどすべての通信媒体によるものが含まれます。

そして、保護の対象は通信内容だけでなく、通信日時・発信人・受信人の氏名・住所など、
内容を察知させる可能性のある外形的事実にも及びます。

税務調査において、無断で電子メールの内容を覗き見ることは、
明確な「通信の秘密」の侵害です。

許されるのは、憲法35条の令状主義の要件を満たした犯罪捜査の時だけです。