内部資料と税務調査

本日は、内部資料と税務調査についてお話したいと思います。

税理士会のデータベースに、開示請求により開示された
国税不服審判所の非公開裁決事例があります。

その1つに、内航海運業の建造引当権が法人税通達で営業権とされていた、
10年以上前の時期のもので興味を引くものがありました。

会社側は、子会社に支払う外注傭船料につき、子会社に赤字が出ないように
子会社が負担するコストをすべて積算したものとしています。

ここには架空のコストや虚偽のコストはなく、損金算入可の真正なものであると主張しました。

裁決は、子会社の営業権償却費は本来の傭船料の原価を構成するものではないので、
その部分は子会社への利益供与としての寄附金であるとしました。

税務調査の過程で、会社グループとしての決算やグループ内取引についての資料である
「決算検討社内資料」とか「企画部業務概要および懸案事項」などという編綴書類が
開示されました。

それらの中には、税務面の危惧を上司に対して説明するために作成したものが含まれており、
節税財源確保のための子会社営業権償却費の利用などが記載されておりました。

この事例は、単なる過少申告加算税ではなく、重加算税の賦課とされています。

子会社への利益供与を通じて、請求人の課税所得金額を圧縮するために
正当な傭船料のコスト計算に基づかず、本件償却費合計額相当額を傭船料に
不当に上乗せすることに子会社等と通謀合意の上、傭船料を過大とした
虚偽の本件各協定書を作成し、本件各事業年度の期首にさかのぼって適用したもの
と認めるのが相当であるとの理由です。

裁決書には、新たな処分庁の主張はありません。

税務上の問題を認識しながら、虚偽の傭船料の協定書を作成し、
あたかも正当な傭船料であるがごとく仮装する行為をしている以上、
傭船料の本来の時価の検討など不要との余裕綽々の態度です。

動かぬ自白証拠を押さえた強みからでしょうか。

税務調査で、コンピューター内の電子メールなどを見せるように求められるケースが
多くなっているとの情報もあります。

本音でヤリトリしている内部情報が思わぬ落とし穴となることがありそうです。