本日は、微妙な医療費控除についてお話したいと思います。
他の法律分野で確立した概念で、税法でも用いられるものを借用概念と言います。
確定申告の医療費控除の対象となる「治療又は療養に必要な医薬品の購入」の医薬品は、
所得税法には独自の定義規定は置かれていません。
しかし、通達上「薬事法2条1項に規定する医薬品」と理解され、概念が借用されています。
薬事法は、日本における「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」「医療機器」の
4種の運用を定めた法律です。
このうち「医薬品」とは、定義を簡記すると次の通りになります。
【医薬品の定義】
①日本薬局方に定められている物
②人・動物の疾病の診断・治療等を目的とする物で機械器具等でないもの(医薬部外品を除く)
③人・動物の身体の構造・機能に影響を及ぼすことを目的とするもので機械器具等でないもの
(医薬部外品・化粧品を除く)
①の日本薬局方とは、日本の医薬品の規格基準書、いわば薬剤師のバイブルのようなものです。
このような網羅性のある基準があるのであれば、税法の概念としても借用したい
といったところでしょうか。
【薬事法の4分類の具体例】
■医薬品・・・処方薬・薬局の市販薬
■医薬部外品・・・薬用歯磨き・薬用クリーム・育毛剤・ベビーパウダー等
■化粧品・・・石鹸・シャンプー・スキンケア等
■医療機器・・・眼鏡・コンタクトレンズ・補聴器・体温計・電気マッサージ等
また、食品衛生法で規制する食品には、薬事法に規定する
「医薬品」「医薬部外品」は含まれないとされています。
■医薬品・医薬部外品・・・薬事法
■特定保険用食品(トクホ)/栄養機能食品・・・健康保険増進法・食品衛生法
■一般食品・・・食品衛生法
このように、割とスッキリとした立ち位置にある医薬品ですが、
医療費控除の適用場面では限界が感じられる部分もあります。
例えば、丸山ワクチンは薬事法の医薬品ではありませんが、
医師による治療の一環と考えて、医療費控除の対象とされています。
一方、自宅で行う自然医食療法は、食品の購入であり、
薬事法の医薬品の購入でないため、控除の対象外とされます。