出国と納税管理人

本日は、出国と納税管理人についてお話したいと思います。

所得税法では、出国とは単に「国を出る」という意味ではありません。

出国とは、居住者(国内に生活の本拠を有している人)については、
納税管理人の届出をしないで国内に住所及び居所を有しなくなることをいいます。

また、非居住者(居住者以外の人で国内に一定の所得を有している人)にあっては、
納税管理人の届出をしないで国内に居所を有しなくなることをいいます。

つまり、この納税管理人の届出をして国を出た人は、
所得税法上の「出国」には該当しないことになります。

それでは、納税管理人の届出をした時としない時では、
その法的効果にどのような違いが生じるのでしょうか?

ここでは、給与所得者である居住者が1年を超える予定で
年の中途に海外赴任する場合についてその違いをみてみましょう。

■納税管理人の届出をしなかった場合

勤務先では、届出の有無にかかわらず出国時までに年末調整の手続きをします。

しかし、他に不動産所得等がある場合には、本人は予定納税や確定申告も
出国時までに申告・納税の手続きをしなければなりません。

また、出国の翌日から出国者は非居住者となります。

しかし、不動産所得等の国内源泉所得がある場合には、非居住者であっても
日本での申告義務があることから、さらに翌年3月15日までに確定申告をする必要があります。

その際には、出国時にした確定申告に係る納税額は精算されます。

■納税管理人の届出をした場合

勤務先での年末調整は当然として、申告及び納期限は、予定納税はもちろんのこと
確定申告も翌年3月15日までで通常通りです。

これら申告及び納付は、納税管理人が実施することになっています。

したがって、納税管理人の届出をしなかった場合のように、出国時に確定申告をし、
さらに翌年3月にもう一度確定申告をする、といった二度手間を省くことができます。

また、納税管理人の届出をした海外赴任者で、国内に不動産所得等総合課税の対象となる
所得を有する場合、扶養親族の判定時期は、その年の12月31日の現況で判定できます。

しかし一方、納税管理人の届出をしない海外赴任者の場合は、
出国時で判定することになっています。

なお、納税管理人は国内に住所又は居所を有する個人でも法人でも構いません。