手段の目的化

本日は、手段の目的化についてお話したいと思います。

経営においてよく起こりがちな誤りのひとつに、「手段の目的化」があります。

例えば、以下のようなものです。

本来は、経営戦略の進展状況をチェックして、必要なアクションを検討するのが、
経営会議の本来の「目的」であるのに、会議を開くという「手段」そのものを
「目的」と考えてしまう。

手段が目的化すると、本来の目的を実現する行動が乏しくなるばかりでなく、
あまり役に立たないことに多くの時間と労力を使うのが当たり前になってしまいます。

「標準化」によって事務の効率化・工程不良の発生防止を図ろうとすることは、
企業において通常行われる努力です。

ところが、トップの方針で「○○賞」をとって会社の名声を高めたい。

それには「標準化」が進んでいると評価が高まるとトップの判断で
会社をあげて「標準化」を進めることになります。

すると、沢山の標準書を作成することに多くの社員が動員される
といった「手段の目的化」が生じることがあります。

つまり、トップの一声で社内に「標準化運動」が始まって、本来の顧客満足の追求
・利益の向上・社員の能力向上など、重要な事柄への努力が希薄になってしまいます。

しかし、ひとくちに「手段の目的化は良くない」と断言できない場合があります。

トップが社員と直接コミュニケーションをとるために、社員を誕生月別に分けて、
毎月昼食会を主催するといった施策はなかなか良いものです。

その場合、昼食会のメニューは雰囲気を和らげ、話題を豊かにし、
コミュニケーションを促進するなどの目的を持ち、総務課長の腕の見せ所になります。

つまり、昼食会が「手段の目的化」になっていますが、それはトップと社員の
直接コミュニケーションをよりよいものにするという本来の目的を助けますから、
むしろ歓迎されるべきことになります。

トップは、何事につけ自分の方針を示す時、「何を目的としているのか」
「手段の目的化を避ける必要がないか」と自問自答した上で、社員が間違えにくい
適切な言葉を選んで示すことが大切です。

また、あえて「手段の目的化」を許容しても害がなく、むしろ好ましい場合は、
それを見通してトップの一言を発すべきでしょう。