設立直後の簡易課税の適用制限

本日は、設立直後の簡易課税の適用制限についてお話したいと思います。

最近の消費税法の改正では、新設法人の免税期間を利用した租税回避行為に
目をつけたものが続いています。

平成23年改正の「特定期間」による納税義務の2次判定や、平成24年改正の
「特定新規設立法人の免税点制度の不適用」がこれに当たります。

この他にも、設立時から課税事業者である事業者に簡易課税制度を選択させない規定が、
平成22年から設けられています。

設立1・2期目の消費税の留意事項として、再確認してみましょう。

平成22年税制改正により、次の期間中に税抜価額100万円以上の固定資産(調整対象固定資産)を
取得した場合には、①取得年以後3年間は課税事業者として申告を義務付け、
②その期間中の簡易課税制度の適用を禁止することとされました。

<下記の2年間>

①課税選択事業者の強制適用期間

②資本金1,000万円以上の新設法人の設立事業年度と翌事業年度

これは、もともと不動産賃貸業者の「自動販売機設置による還付スキーム」を
抑止するものとして設けられた措置です。

不動産賃貸業を開始する事業者が、賃貸物件完成前に自動販売機を設置して、
ごく少額の課税売上高を計上する形を取ります。

その時、消費税の課税事業者の立場を選択し、その課税期間終了間際に建物を完成させ、
建物に係る高額の仕入税額控除を取ることで、還付を受ける「還付スキーム」が存在しました。

  第1期        第2期        第3期

自販機売上(少)       賃貸を本格的に開始
・建物購入  

原則課税(還付)     簡易課税      免税事業者

この時、第2期目について課税事業者を選択したため納税があるところを、
税額を抑えつつ、次年度以降で「課税売上割合が著しく変動した場合」の調整計算を
させない狙いで、「簡易課税」を選択することが、この手法の常道とされていました。

平成22年改正では、第2期を簡易課税不適用とした上で、
第3期目にも原則課税を強制することにしました。

それにより、従前から存在する通算課税売上割合(1~3期)を用いて、
固定資産(建物)の仕入税額控除を再計算させる制度を働くようにし、
第3期の納税額にその調整額を加算する措置を取りました。

ただ、100万円程度の固定資産取得でこの規定が発動するのは、一般企業には酷な話です。