本日は、相続税の葬式費用の取扱いについてお話したいと思います。
最近、書店では「エンディングノート」や「遺言書の書き方」などの書籍が目につきます。
相続の話題ばかりでなく、葬儀やお墓・お寺の情報やマナー等にも関心が高いようです。
近年の傾向としては、直葬・家族葬などこじんまりとした葬儀も増えているそうで、
付き合いが希薄となった時勢やライフスタイルの多様化を反映しているのかもしれません。
相続税では、葬式費用は日本の慣習上、必然的に発生するものであり、
国民感情も考慮して、相続税の課税価格から控除することとされています。
ただし、その控除の範囲は故人を弔うセレモニーの費用に限られ、
追善供養にための営まれるもの(例:初七日法会)の控除は認められておりません。
とはいえ、お葬式は宗教や地域的習慣によりその様式が異なるため、
何が葬式費用であるかの判定が極めて難しいケースがあります。
個々に社会通念に即して判断すべきところですが、名古屋国税局の文書回答事例(H22)の
「告別式を2回に分けて行った場合の相続税の葬式費用の取扱いについて」が、
国税庁HPに掲載されています。
この事例では、故人の亡くなられたA市と、親族や幼馴染みに見送ってもらうため
故人が生まれてから就職まで過ごしたB市の2箇所で、告別式を行ったというものです。
【日程】
H22.3.□ A市で通夜
H22.3.△ A市で告別式(式の後、火葬)
H22.3.△+4日 B市で告別式
H22.5.○ 納骨
この2回の告別式の費用とも、相続税の課税価格から控除することができるのかというのが
照会の趣旨です。
国税は、この事例に関しては両方とも控除できると判断しました。
A市の告別式が「死者を弔う儀式」であることは勿論のこと、
B市の告別式も参列が困難な知人等の便宜を考慮して、遺族の意思により別途行われたもので、
内容も遺影・遺骨を祭り、読経・焼香を行った「死者を弔う儀式」であり、
追善供養のための法会(法事)ではないとの見解を示しました。
経緯・内容・金額をみての総合判断のようです。