贈与とみなし贈与における取得日及び取得費の引継

本日は、贈与とみなし贈与における取得日及び取得費の引継について
お話したいと思います。

持分の放棄など共有者の単独行為により、他の共有者は反射的に
放棄した者の持分を取得することがまれにあります。

この場合の課税実務ですが、所得税の一時所得課税ではなく、
みなし贈与として贈与税の課税をしています。

問題は、その後、この「みなし贈与」によって取得した資産を譲渡した場合、
譲渡所得の計算上、その資産の取得日及び取得費を引継ぐことができるかどうかです。

所得税法60条では、以下のように規定しています。

居住者が個人から贈与により取得した資産を譲渡した場合には、その資産の取得日及び
取得費については、その者が引き続きその資産を所有していたものとみなす。

つまり、贈与者の取得日及び取得費を引継ぐことになっています。

所得税法9条の非課税規定には、「贈与」には「みなし贈与」も含む旨の文言がありますが、
この所得税法60条の引継規定の「贈与」には、特段の定めがありません。

ですので、一般法である民法に規定にしたがって「贈与」を解釈することになります。

民法上の贈与は契約であり、その契約は諾成・片務・不要式の契約で厳格な法律行為です。

したがって、所得税法60条の贈与には、このような契約と異なる行為(例えば、持分放棄
といった単独行為や低額譲渡による契約など)、いわゆる「みなし贈与」に該当するものは
含まれないと解釈されます。

では、取得費をどう計算するかです。明確な規定はありません。

他に別段の定めがない以上、原則、取得費はゼロとなるはずです。

しかし税負担を考慮してか、課税実務では、みなし贈与時の価額で取得費を計算することに
なっているようです。

これでは、みなし贈与にはキャピタル・ゲイン課税がない分だけ有利ということになります。

通常の贈与においては、贈与税が課された上、さらに当該資産を譲渡した時は、
取得費引継の規定によりキャピタル・ゲイン課税がなされ、結果、二重課税が生じています。

したがって、本来であれば持分放棄による財産取得には、贈与課税でなく、
一時所得課税にすべきだったのではないかとの疑問が湧きます。