コーポレート・インバージョン

本日は、コーポレート・インバージョンについてお話したいと思います。

外国親法人P株式を用いるコーポレート・インバージョン(逆さ再編)を実行するには、
まず合併法人Bが親法人株式Pを取得する必要があります。

組織再編の交付株式としての親会社株式取得は、会社法も容認しています。

ただ、取得方法については特に触れていません。

法人税法も親法人から直接提供された親法人株式ならば、取得時や組織再編実行時に
時価評価不要としているだけなので、取得方法に制限がありません。

主要な3つの取得方法は、以下の通りです。

①親法人Pによる無償または備忘価格(例えば1株1円)による新株発行等です。

 そもそも親法人株式を使う税制適格の三角組織再編のメリットは、資金調達・税負担から
 解放される点にあるため、この方法が本来的なのです。

②親法人Pが子会社Bに対して資金を貸付け、これを子会社Bが親法人Pに払い込むかたちで
 新株発行を行なうという方法です。

 この場合は、外国親法人Pに対する負債の利子が発生することになり、
 内国法人の利益の圧縮をもたらします。

③逆さ合併による方法です。

 被合併法人Aは外国法人Pの全株主なので、逆さ合併によりBは自ずと
 親法人P全株式を保有することになります。

 ただし、これはP法人からの直接提供には該当しません。

1990年代以降、アメリカでインバージョンが問題視されるようになり、
2002年の「米国インバージョン報告書」を契機に、対策税制が採られるようになりました。

対策として、国境での清算の原則のもと将来において清算の機会が失われるものは、
時価清算とされました。

しかし実際には、アメリカのインバージョンの多くは「仕込み」が狙いで、
税制非適格を甘受して、将来における租税負担軽減の仕組みの完成に意を注いだので、
親子間の金銭貸借や親法人への無形資産の異動等が積極的に採用されたようです。

アメリカの経験を踏まえて、日本も国境での清算の原則の下に対策税制を完成させました。

しかし日本の場合、大企業が親会社を外国に置くという任意の選択は採られたことがないので、
同族会社の相続・贈与対策があり得ることとしての制度設計になっているように見えます。