本日は、自己株式の消却についてお話したいと思います。
旧商法施行(平成13年)以後、上場・非上場問わず、
自己株式の取得がかなり機動的に行われるようになりました。
ただ、非上場会社の自己株式の取得後を見ると、
貸借対照表に自己株式がずっと残っている状況のものが多いです。
非上場会社は自己株式を保有していても、上場企業のように
処分などの活用できる機会が少ないのです。
自己が買い戻した株式を消滅させることを自己株式の消却といいます。
上場会社の場合には、消却により一定数の株式が市場に再流通しないことが確定されるため、
株式の需給面でプラスの効果(株価上昇)があるようです。
平成25年11月に、NTTが発行済株式総数の約14%の自己株式消却を行うことを受けて、
株価が続伸したということもありました。
非上場会社では、このような経済的な動機は見当たりません。
しかし、自己株式を処分するあてがないのならば、
消却するということも一考の余地があるのではないでしょうか。
ところが、いざ消却するとなると「ひょっとして課税されるのでは・・・」と
不安に思うかもしれません。
この点については、心配ありません。
自己株式の取得段階において、「みなし配当」という形で留保利益の株主への
還元部分について課税済ですので、消却段階では何も課税は生じません。
自己株式の消却の仕訳は、次のとおりです。
(借)その他資本剰余金/(貸)自己株式・・・①
非上場会社の場合には、「その他資本剰余金」の残高がないこともあり、
上記仕訳後は「その他資本剰余金」がマイナス残高となるケースも多いでしょう。
この場合には、期末時に「その他資本剰余金」をゼロに戻し、
マイナス分は利益剰余金(繰越利益剰余金)に振替えます。
(借)繰越利益剰余金/(貸)その他資本剰余金・・・②
税務上では、上記の会計処理に対応して、税務上の純資産の明細である
別表五(一)の組替えを行います。
①及び②の会計処理があったとしても、税務上は消却前後での利益積立金額
及び資本金等の額の異動がなかったものとして、別表調整が行われます。