本日は、法人税法の罰金・制裁金規定についてお話したいと思います。
グローバル化の進展により、意外なところで罰金の税制の変遷を辿ると、
当たり前のことですが、法律が現実の後追いにならざるを得ないという側面を
はっきりと見て取ることができます。
そもそも罰金の損金算入を認めてしまうと、その分だけ税が軽減されてしまうため、
罰則の効果が薄れてしまいます。
そのため税法では、罰金を損金不算入とするという規定を以前より設けていました。
国際化が進んでいない時代には、国内法による罰金等を
その対象として想定していれば問題ありませんでした。
しかし近年では、海外進出企業が慣習・事情が異なる現地国で、日本では思いもよらぬ
罰金や制裁金が科されてしまい、それが多額にのぼることが問題となってきました。
このような問題の先駆けとしては、「大和銀行NY支店巨額損失事件」(平成8年)が
挙げられます。
この事件は、大和銀行NY支店の行員が行った不正取引を銀行側が隠蔽し報告を怠ったため、
米司法当局から刑事訴追を受け、司法取引により3億4,000万ドル(当時の約350億円)を
支払ったというものです。
当時の旧法人税法38条でも罰金等の損金不算入規定が置かれていましたが、
「日本の国情と異なる米国の罰金等がその対象となるのか」「日本の裁判手続では
想定されていない米国の司法取引が対象となるのか」は、明確ではありませんでした。
その後、平成10年税制改正により、外国政府が課する罰金も損金不算入とされました。
なお、改正条文の解釈として、司法取引により課される罰金も刑事訴訟手続を経るものなので
損金不算入となるとの通達規定への明示もされました。
最近、日本の大手電機メーカー等に課されることが増えてきた
EU公正取引委員会による課徴金もその例に当たります。
これも当初は日本の独占禁止法による課徴金のみを損金不算入とするものでしたが、
不均衡是正の観点から平成21年改正で外国課徴金も損金不算入とすることが明記されました。